■ヨーロッパ的な美しい街サンチャゴ
アンデス山脈が間近に迫るサンチャゴは5月下旬の秋真っ盛り。街路樹が黄色に色づいて本当に奇麗な街でした。ペルーやボリビアに比べて白人の人口が圧倒的に多く、ヨーロッパ的な落ち着いた都市でした。
さて、冒頭に2021年に行われている大統領選挙の話題をご紹介しましたが、僕が訪れた1978年当時はアウグスト・ピノチェト大統領の独裁政権の時代でした。前年のクーデターで政権を掌握したピノチェト将軍は、ちょうどドイツでワールドカップが開かれていた1974年6月に大統領に就任。長い独裁政治が始まったばかりでした。
チリでは1970年9月の大統領選挙で左翼「人民連合戦線」のサルバトーレ・アジェンデが当選。世界で初めて自由選挙によって選ばれたマルクス主義政権が成立して産業の国有化や農地改革といった社会主義的な政策を実行して世界から注目を集めていました。
しかし、チリの富裕層たちや銅鉱山を牛耳っていたアメリカ企業などが国有化に強く反発。アメリカ政府はチリに制裁を課します。そして、1973年の9月11日に陸軍総司令官に就任したばかりのピノチェト将軍も加わったクーデターが発生します。
アジェンデ大統領は反乱部隊に降伏することなく、大統領官邸「モネダ宮殿」に立て籠もって交戦し、最後は自ら銃で頭を撃ち抜いて自殺を遂げます。その後、権力を握ったピノチェト将軍は左派を徹底的に弾圧。処刑された者は数千人とも数万人とも言われています。