■再現できなかった等々力での熱狂

 対照的なのが、87分の槙野智章の投入だ。槙野は強靭なフィジカルとジャンプ力を生かして、最前線に配置された。72分からは興梠慎三が1トップの位置に入っていたが、槙野はそれよりも前に置かれたのだ。

 その槙野を目掛けて、終盤の浦和はロングボールを送り込んだ。槙野はゴール前で競り合いに挑んだほか、ドリブルで持ち上がろうともした。鹿島はこれに対して、犬飼智也をピッチに入れて3バック+ウイングバックで守ろうとしたほどだ。それほど、1点を守りたい鹿島にとってはイヤな存在だった。しかし、槙野のプレー時間は3分+アディショナルタイム。

 槙野はルヴァンカップ川崎戦で92分にピッチに入ってわずか2分後に“決勝弾”を決めているとはいえ、毎回、重要な仕事ができるわけではない。等々力での熱狂を再現できず、このまま守り切られてしまった。

 槙野の放ったシュート本数は「1」にしか過ぎないが、ユンカーよりも脅威になっていたのは事実だ。ビルドアップが困難な中で、槙野というターゲットマンは選手にとっても分かりやすかったからだ。浦和は確かに試行錯誤を90分間通して模索し続けたが、皮肉にも、ビルドアップを無視した方法が最も光明となっていたのである。

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