ヨーロッパでは、各国の顔となる数クラブが国内リーグをけん引する構図が通例となっている。さらに厳然たるヒエラルキーは欧州全土へと広がり、頂点への長い坂道を形成している。
その図式の中で、イタリアでは長年にわたり、ユヴェントスの1強ぶりが目立ってきた。世界最高峰リーグと呼ばれた時代は遠い昔。セリエAは落ち込みが続いていた。
しかし、W杯予選敗退というどん底を前後して、「開き直りの挑戦」への機運が高まり、リーグの競争力が激化。リードする存在はなくなったものの、リーグ全体の底上げ、さらには代表チームのEURO制覇へとつながった。
拮抗したリーグでのクラブ間の競争の活性化、新戦力の台頭と代表チームへの還元…。現在のセリエAには、やはり世界でも珍しい「超拮抗リーグ」Jリーグが学ぶべき点が透けて見えてくる。
■消滅した「カテナッチョ」
かつて、強豪と対戦するプロヴィンチャの大半は「カルチョ型」だった。引いて守り、カウンターから数少ない機会を生かしてウノゼロ(1-0)を狙う作戦だ。だが、今では後方からのビルドアップやハイプレスでの即時ボール奪回、リードしても追加点を狙う姿勢などが当然のようにみられる。いわゆるカテナッチョは消滅したのだ。
格下が立ち向かってくれば、格上も対応が求められる。個の力の差で押し切った横綱相撲では勝てないからだ。彼らも現代的な戦術を取り入れ、変革を目指していく必要がある。
ナポリでは、稀代の戦術家マウリツィオ・サッリが一定の型をもたらしていた。プレミアリーグで経験値を積んだアントニオ・コンテは、インテルを復活させた。結果にはつながらなかったが、ユヴェントスはサッリやアンドレア・ピルロの抜擢で変身を目指した。
ラツィオで成功したシモーネ・インザーギや、ミランとナポリで評価を高めたジェンナーロ・ガットゥーゾなど、新世代組も強豪で一定の立場を確立。今季からローマとナポリを率いるジョゼ・モウリーニョとルチアーノ・スパレッティなど、1世代前の指揮官たちも、単なる「マネージャー」「モチベーター」ではなくなった。
セリエAは、全体的に少しずつレベルアップを続け、「ユーヴェの1強」から脱却していったのだ。