■ロマリオが投げかけた波紋

 オフサイドの変化のきっかけは1990年の「並びはOK」という「解釈の変更」だった。それまでは、相手の後ろから2人目の選手(たいていは最後尾のDF)と並んでいるということは、自分の前に2人以上の相手選手がいないことになり、オフサイドポジションとされていた。しかし1990年のルール改正で、相手より前に出ていなければ「オフサイドではない」ということになったのだ。

 1994年のワールドカップでは、「ルール改正」に近い解釈の変更があった。かつては、ピッチの幅を「右・中央・左」と3つほどのエリアに分け、プレーしようとしまいと、たとえばボールが右サイドに出たときにそのサイドでオフサイドポジションにいた選手は自動的にオフサイドになるという解釈がなされていた。左サイドの選手はオフサイドにはならない。1994年当時には、それが狭められ、ボールが飛んだ方向にいるかどうかがオフサイド判定の基準となっていた。ところが、準々決勝のオランダ対ブラジルで大きな出来事が起こった。

 ブラジルが1-0とリードして迎えた後半18分、オランダGKエド・デフイのキックをブラジルDFブランコが自陣でヘディング、大きく前線に向かってはね返した。ボールの先には、オフサイドポジションのブラジルFWロマリオ。日本だけでなく世界で広く理解されていた当時の判定基準なら、完全なオフサイドである。当然、オランダのDFは足を止める。しかしロマリオは自陣に向かって歩きながらまったく知らん顔をし、ワンバウンドしたボールに後方からFWベベットが走り込み、あぜんとするオランダ守備陣を置き去りにして2点目を決めてしまったのだ。

 大会後、日本サッカー協会は「ロマリオはボールが飛んだ方向にいたのだからオフサイドではないか」という質問状をFIFAに送った。しかし返答は「ロマリオはプレーに関与していないのでオフサイドではない」というものだった。これによって、それまで通用していた「ボールが飛んだ方向にいる選手の自動的オフサイド」がなくなり、プレーした(あるいはプレーしようとした)かどうかが問われることになった。

 2013年には、オフサイドポジションにいる選手にパスが送られても、そのパスが届く前に守備側の選手が意図的なプレーをし、防ぎきれずに当初オフサイドポジションにいる選手に渡った場合、オフサイドとはならなくなった。

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