■緊急青空ミーティング

 後半になっても取り戻せない流れを打破すべく、マッシモ・フィッカデンティ監督が手を打ったのは51分のことだった。前田直輝を下げて、シュヴィルツォクを投入。途中加入ながらリーグ戦ですでに3得点を挙げているポーランド代表を最前線に立たせたのだ、が、それでも流れは変わらない。そればかりか、55分にFC東京に2点目を許してしまった。味の素スタジアムに映された電光掲示板のスコアは「2-0」。それまで、名古屋は攻撃に転じることができていなかったこともあって、事実上の“決勝ゴール”を決めた高萩洋次郎が高く飛び上がって喜ぶ姿は、名古屋の選手の闘志をへし折るのに十分だった。

 FC東京のワンサイドゲームで、逆転をするにはあまりに高いハードルだったが、それでも名古屋は逆転してみせる。後半の飲水タイム、フィッカデンティ監督はボード板をピッチの上に置いて指示を出した。それを、名古屋の選手がグルっと囲む。飲水タイムが過ぎて、FC東京の選手がピッチに戻っても、マッシモは指示を止めない。この緊急青空ミーティングが、名古屋の選手に火をつけた。

 稲垣祥が劇的なゴールを決めたのは、その後のこと。80分、名古屋の選手が執念で得点を奪おうと、ゴール前に殺到する。FC東京も跳ね返そうと必死に足を出すが、その瞬間、ボールが浮かぶ。そこに頭ごと飛び込んだのは背番号15。体ごと押し込んだ次の瞬間、名古屋のサポーターの前に集まった選手たちは言葉で表現できないほどの笑顔になっていた。

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