■ポスターは世に連れ、世はポスターに連れ
それにしても、80円切手である。日本が初めてワールドカップに出場した1998年の4年前、1994年に封書の定型普通郵便料金が62円から80円に値上げされた。1989年にスタートした消費税3%分を含む料金である。1997年に消費税が5%になったときには値上げされなかったが、2010年にこの画期的な「ワールドカップ公式ポスターシート」が出た4年後の2014年4月には消費税が5%から8%に引き上げられ、2014年大会の記念切手は1枚が82円となっている。そして2019年10月の10%への引き上げで、いま、定型普通郵便の封書は84円である。
わずか11年前に発行されたワールドカップ1930年大会のポスターを印刷した切手1枚では、もう心のこもった手紙を送ることはできない。もっとも、私の場合、切手を貼って送る郵便物の多くは、原稿料の支払いを求める心のこもった請求書ではあるが…。郵便料金の値上げを反映する切手の額面の変化は、募る「暮らしにくさ」を象徴してはいないだろうか。やはり、「ポスターは世に連れ、世はポスターに連れ」なのである。