大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第79回「ワールドカップ、ポスターは世に連れ…」(4)「記念切手を見て心に浮かぶ『暮らしにくさ』」の画像
2010年南アフリカ大会を前に日本郵便が発行した「特殊切手」ワールドカップ歴代ポスター集の20枚セット。額面が80円であるため、2円切手を2枚はらないと、請求書も送れない
■【画像】実はすでに使われていなかったモノが描かれた2006年ドイツ大会などのポスター

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、「大会のシンボル」。ワールドカップのポスターについて、サッカージャーナリスト大住良之がひも解く。

 2006年ドイツ大会では、サッカーボールを夜空の星で描いたポスターが使われた。しかしこうした「32枚パネル」型のボールはとっくに使われなくなっており、アディダス社からこの大会向けに提供されたボールはヒョウタン形を6つ貼り合わせたようなデザイン。決勝戦だけ金色のひょうたんが使われた。このポスターは、あまり評判が良くなかった。

 一転して2010年南アフリカ大会のポスターは、アフリカっぽさ濃厚に出ていて、インパクトがあった。色は黄色と緑を使った南アフリカ代表のユニホームを思わせるものだが、当時アフリカ最高の選手と言われていたサミュエル・エトー(カメルーン)に似た選手の黒い横顔がアフリカ大陸の形になっており、「アフリカ最初のワールドカップ」が強く意識されている。

 2014年ブラジル大会の公式ポスターは、ボールを奪い合う2人の選手の足がモチーフになっていて、その足やポスター上部の模様には、ブラジルを象徴する踊り、太陽、海岸、音楽、多彩な植物、多様性のある生き物などが描かれている。足の部分を見て、このころ選手たちにはやり始めていた「タトゥー」を連想してしまうのは、私だけだろうか。全体に白っぽいデザインで印象が薄いが、2選手の足と上の模様で囲まれた白い部分がブラジルの国土を表していることも、あまり知られていない。

 2022年カタール大会の公式ポスターはまだ発表されていない。斬新な大会ロゴを作った組織委員会だから、ポスターもアラブの伝統を示しつつ完成度の高いものになると期待される。

PHOTO GALLERY ■【画像】実はすでに使われていなかったモノが描かれた2006年ドイツ大会などのポスター
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