■いまいちだった日韓大会
1994年アメリカ大会のポスターは、カラフルなイラストに戻った。アメリカの部分に星条旗をあしらった地球をバックに、オーバーヘッドキックをする選手。アメリカ人はオーバーヘッドキックが大好きだ。
1998年フランス大会のポスターは、一般公募から選ばれたカラフルなイラストが使われた。会場となった都市のひとつであるモンペリエ市に在住する当時26歳の女性画学生ナタリー・ルガルの作品である。技法としては、かなり複雑なものが使われたが、彼女は、「要するに、ワールドカップはパーティーよ」と言いたかったのだそうだ。
そしてワールドカップ史上初めての「共同開催」となった2002年の日本/韓国大会。公式ポスターも日韓合作となった。両国の気鋭の書家・カリグラファーである平野荘弦とビョン・チュスクが筆をとって基本のピッチ図を描いたが、最終的にポスターのデザインをしたのは、FIFAと契約した英国のデザイン会社インターブランド社。この会社は大会の公式ロゴとマスコットのデザインも担当したが、いまでは誰も覚えていないマスコットとともに、大会ロゴや、この上品過ぎる仕上がりのポスターがあまり日韓両国のファンに親しまれなかったのは、こうした制作形式に原因があったのかもしれない。