「コーナーキックをどう勝利に結びつけるか~セットプレー専門コーチに聞く」(2)原則中の原則「GKにキャッチされてはならない」と「理論の真骨頂」の画像
コーナーキックで競り合う奈良竜樹、ドウグラス、 村上昌謙 福岡対神戸戦(20210619) 撮影/原壮史

 勝負の神は細部に宿る。競技の枠を超え、スポーツの世界に伝わる言葉だ。サッカーにおいては、例えばセットプレーがその細部にあたる。そのディテールを掘り下げることで、大局が動くことがある。サッカー取材歴50年以上のベテランジャーナリスト・大住良之が、セットプレーを深掘りする。セットプレーの専門コーチ、山内智裕さんに話を聞いた。

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 山内さんの「ミッション」は、リスタートの攻撃だった。まずCKのときに誰がどうポジションを取るのか、それまで選手たちがなんとなくやっていたものを、それぞれの能力や個性に応じて厳密に決め、それを徹底させた。

 通常、CKでは、図1のように、ニアポスト側から1番、2番、3番、4番、5番と配置する。その役割を明確に視える化し、的確に人を配するようにした。

図1

 1番と2番は、ニアポストに走る選手。このふたりは、背が高い必要はない。ただ、勇敢で、相手の前に体を投げだし、つぶれ役になれる選手、背は低くても、ボールを頭に当てる能力をもった選手が必要だ。

 この選手は、「ストーン」と呼ばれる守備側のチームがニアポスト側のゴールエリアの角に配置する選手に簡単にクリアさせないという役割ももっているので、とにかく頭に当てる勇気が必要だ。

 3番と4番は、ジャンプしてボールを叩きつけられる選手。走り込んでではなく、その場で垂直跳びして叩きつけることができなければならない。ただ大柄だからといってセンターバックをもってきても、頭には当てられるが叩きつけるヘディングが得意でない選手もいるので、安易に選んではいけない。

 そして5番には、フリーマンで、嗅覚のある選手を置く。1番や2番の選手がニアポスト前でつぶれながらかろうじて触ったボールがどこにくるか、読み、瞬間的な反応で動ける選手でなければならない。これも背が高い必要はない。

「ペナルティーエリア内でボールに合わせようとする選手は、この5人だけでいい」と、山内さんは言う。よく小さな選手をGKの前に置き、GKの動きを制限させようというチームがあるが、山内さんのCKの原則中の原則が「GKにキャッチされてはならない」ということなので、意味がないという。これをやるくらいなら、「こぼれ球要員」としたほうがいいいというのだ。そしてこの「こぼれ球要員」の考え方こそ、「山内理論」の真骨頂だ。

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