■新たな可能性を象徴したシュートシーン

 さらにこの試合、名古屋の新たな可能性を感じさせたのが前田直輝の1トップ起用である。先制点につながった前線からのプレッシングもそうだが、最終ラインの裏に抜け出すオフ・ザ・ボールの動きが秀逸だった。

 前半終了間際には、象徴的なシーンがあった。前田が斜めの走りで、最終ラインの裏を取る。呼び込んだ吉田からのロングパスを落とすと、走り込んでいたのは森下。シュートはゴールわずか左にそれた。

 56分にも「1点もの」のシーンがあった。中盤で受けた柿谷曜一朗が右へ展開すると、成瀬竣平がすかさずゴール前にボールを送る。走り込んでいた前田はオフサイドだったものの、そのわずか後ろで並走している男がいた。柿谷へとパスを出した後、ゴール前へ突進していた森下である。もしも柿谷がヘディングしていなければ、森下が追加点を奪っていたかもしれなかった。

 交代で1トップに入ったシュヴィルツォクの怖さは、加入してからの短期間ですでに広く認知されている。負傷から戻ってきた金崎夢生もいる。その1トップのポジションでの、前田のまた一味違う個性の発揮は、さらに大きく広がる名古屋の可能性を感じさせた。

 現在のJ1では、3位でのACL出場権確保が名古屋にとっての現実的な目標になっている。だが、カップ戦においては天皇杯ルヴァンカップ、ACLと、3つの大会で生き残っている。

 佳境に入り、名古屋は加速しようとしている。今季のタイトル獲得が、ぐっと現実味を増してきた。

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