名古屋 前田直輝
前田の1トップ起用は、名古屋の可能性をさらに広げる 写真:中地拓也

■9月26日/J1第30節 名古屋グランパス大分トリニータ(豊田ス)

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 森下龍矢は本来、右サイドバックとしての働きを見込まれて、プロ1年目を過ごしたサガン鳥栖から迎えられた選手である。

 だが、プレシーズンのキャンプで右サイドバックのポジションを争うのは宮原和也成瀬竣平で、自身は左サイドバックとして不動の存在である吉田豊に挑戦することとなった。そして今、左サイドハーフとしての出場を増やしているが、決して仕方なく「流れ着いた」ポジションではない。

 大学時代の森下は、自ら「切り込み隊長」と表現するほど、イケイケのアタッカーだった。もちろん守備力も有しているが、攻撃力が魅力の選手だ。

 相馬勇紀ほどのドリブルでの突破力はないが、良いシーンで顔を出す。ゴール右での開始1分でのこの試合最初のFKは、攻めに出た森下が奪ったものだった。その3分後には、左サイドにいたはずが、ボックス右へと顔を出し、やはりFKを奪っている。

 この試合でのスプリント数は、両チーム通じて群を抜く33回。

 右サイドハーフに入り、大いに攻撃のアクセントになっていたマテウスでさえ27回だったのだから、その働きぶりがよく分かる。39分にはそのマテウスが、ロングボールに反応して右サイドを抜け出した。ゴール前にクロスを送ったのだが、走り込んでいたのは森下だ。チャンスの匂いをかぎ取って長い距離を走り、しかもスピードを調整しながら完璧なタイミングで侵入。シュートは惜しくもGKに防がれたものの、見事な走りを見せていた。

 また、単にサイドで走り回るばかりではない。中央へと位置取って、縦関係を組む吉田豊の攻撃参加も促していた。最終ラインからのロングボールを引き出す動き出しもあり、時間が経つにつれてボールが送り込まれる回数が増えていった。

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