■10番を背負うプライドをにじませた場面
もう一つの掛け声は、マルコス・ジュニオールのものだ。10番を背負うブラジル人テクニシャンの掛け声はシンプルだ。手を強くたたきながら、あの強い目線を一人一人に向けながら、チーム全体に何度もこう呼びかけた。
「ゴー、ゴー、ゴー、ゴー!!」
シンプルだが、だからこそ直接選手の気持ちに伝わる言葉だ。マルコス・ジュニオール自身、同点PKを決めているが、PKを得た際、真っ先にボールを掴んだのは実は前田大然だった。
前田はPKを蹴る覚悟を決めていた。しかし、その大然にマルコス・ジュニオールが近寄ると、ボールを渡すよう要求した。得点への強い気持ちを感じさせる場面でもあり、10番を背負うプライドと責任をにじませた場面でもあった。マルコス・ジュニオールはPKを低い弾道で左隅にしっかりと決めている。
両チームから感じた勝利への気持ちは、結局、どちらかに傾くことはなく引き分けという結果をもたらした。マリノスが勝ち切るシナリオもあったし、横浜FCが先制ゴールの勢いのままマリノスを押さえるシナリオもあったはずだ。
サッカーの神様が与えたそのどちらでもない結果は、それぞれのチームの今後の戦い方に影響を及ぼすだろう。そして、シーズン終了時点で惜しむ結果となる可能性も大いに秘めている。