■ブラジルよりも手を焼いたアルゼンチン
「ケチャップ」という名前で知られていますが、別にケチャップでなくてもかまいません。マヨネーズでも絵具でもなんでも液体状もしくはゲル状のものを他人の鞄や服に付着させて、それを拭いてあげると言って近づいてきます。そして、鞄や服を拭いている間に財布を抜き取ったり、あるいは被害者が気を取られているうちに仲間が鞄ごと持ち去ってしまうという手口です。
周りに仲間がいるはずなので、こういう時はとにかく「いやいや、必要ない」と手で振り払って、さっさと現場を離れるしかありません。
たしかに、「ケチャップ強盗」は南米の名物なんですが、何もこちらがこんなに疲れ切っている時に出て来てほしくないものです。まあ、あちらとしては疲れてそうな旅行者なので「カモ」と思ったのかもしれませんが……。
しかし、こちらは南米慣れしているので、そんな単純な手口に引っかかるわけがありません。つまり、お互いに時間の無駄になったわけです。どうせやるなら、引っかかりそうな“素人”を相手にすべきでしょう。
2011年にアルゼンチンでコパ・アメリカがあった時も、ブエノスアイレス滞在中に2度も「ケチャップ強盗」に遭いました。とくに、レティーロ駅北側のバス・ターミナル(かなり危ない場所です)から出て歩いている時にかけられた液体は、薬品のような鼻にツンとくる異臭がして難儀しました。すぐにホテルの部屋で水洗いしたのですが、匂いが抜けるまで半月くらいかかりました。