大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第76回「黙って立ち続けて1世紀半」(3)「御年158歳のレジェンドにリスペクトを」の画像
真っ白に塗られたゴールポストのように存在を主張しているわけではなく、試合の大半の時間は注目も集めずに、コーナーフラッグポストは立ち続けている。しかし4本のうち1本でも欠けるようなことがあったら、試合は続行できない (c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、「ピッチの隅に立つ4人の仲間」。サッカージャーナリスト大住良之が、フットボールの「歴史の証人」について語る。

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 さて、どうしても解決できていない問題がひとつ残された。「なぜコーナーフラッグポストは『マストアイテム』なのか」という疑問である。考えあぐねて私が出した結論は、「レジェンドだから」だった。

「フットボール協会(イングランドサッカー協会)」が誕生したのは1863年。そのときに定められたルールの第1条に、すなわちサッカーの最初のルールの冒頭に、こう書かれている。

「グラウンドの最大の長さは200ヤード、最大の幅は100ヤードとし、この長さと幅は、フラッグによって区切られる」

 当初のサッカーピッチにはラインは一切なく、四隅に立てられたフラッグポストが「境界線」の目安だった。ゴールも幅は8ヤードと定められていたが、高さには制限はなく、2本のポストがあるだけでバーはなかった。その後、この連載の第73回に書いたように、ゴールの高さが決められ、クロスバーが導入された。そして、4本のフラッグポストを結んで白いラインを引くグラウンドも現れた。しかしゴールラインとタッチラインを引くことがルールで義務付けられたのは、1891年、サッカー誕生から30年近くたったときのことだった。

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