■「4人」に与えられた新たな役割
やがてさまざまなラインが整備され、1902年にほぼ現在の形に近くなる。そして1937年にペナルティーアークが引かれ、現在の形が完成した。しかしその間も4本のフラッグポストは、ボールがタッチラインを割ったのかゴールラインかを見極めるという新たな「役割」を見いだされ、ずっとずっと立ち続けているのである。
ときには大きく傾いたまま12分間も放置されても、またときには心ないストライカーたちにゴールの歓喜のなかで跳びげりされたり連続パンチを食らわされても、コーナーフラッグポストは、その名のとおり小さな旗を先端につけてヒラヒラさせながら、サッカー誕生から158年もの間、なんと1世紀半にもわたって黙って立ち続けてきているのである。おそらく、4人(4本)は、互いを見て無言のまま励まし合いながら…。
「もし1本でも欠けたら、わしゃ、試合を続けることは許さんぞ」
この記事を書きながら、私には、そんなフラッグポストの声が聞こえるような気がしてきた。
練習試合のときなど「フラッグはいらないよ」などと言ってしまう私だが、「御年158歳にしてまだまだこの先も現役」という「レジェンド」であるコーナーフラッグポストへのリスペクトを、私たちは思い起こさなければならないと、いまでは心から自戒するのである。そして試合が終わってフラッグポストを片づけるときには、きれいな布などでやさしくぬぐい、所定の収納場所にていねいに収めなければならないと思うのである。