王国ブラジルはFIFAワールドカップにおいて唯一、これまでの21大会すべてで本大会出場を果たし、優勝は最多の5回を数える。ところが不思議なことに、1950年、2014年と2度の自国開催ワールドカップでは優勝できていない。第4回大会では頂上決戦でウルグアイに敗れ、第20回大会は準決勝でドイツに1-7と大敗、リオデジャネイロまでたどり着くこともできなかった。そう、サッカージャーナリスト後藤健生のシリーズ特集「ワールドカップ決勝スタジアム遍歴」(その3)は、2回のワールドカップでメイン会場となったエスタジオ・ド・マラカナンだ。
■35年ぶりのマラカナン再訪
ブラジルで見た試合はどちらも好カードでしたが、とくにマラカナンの試合はとても面白かったような記憶があります。そして、つい先日までワールドカップに出場していたブラジルの代表選手たちも所属クラブに戻って、早速試合に出ていたのに感心したものです。
マラカナンの試合は21時15分キックオフでしたから、スタジアムに着いた頃はすっかり暗くなっていました。
第一印象としては何しろ横に長い構造物だったのに驚きました。スタジアムというよりも、橋とか格納庫といった印象を受けたのです。
僕は、1974年にも西ドイツ・ワールドカップを観戦に行っていました。ですから、西ドイツやアルゼンチンのワールドカップ用のスタジアムは見たことがありました。そうしたスタジアムはどちらかというと、ビルのように高く聳え立っているという印象だったのです。リーベルのスタジアム(決勝の会場)も、ボカのスタジアムもそうです。
しかし、マラカナンは横に広がっているのです。
よく分からないのでメインスタンドの高い席の入場券を買ったら、いきなりエレベーターで6階まで連れて行かれました。上段の前方の見やすい席でした。スタンドはそれだけの高さはあるのですが、全体的に傾斜が緩やかで、そして、20万人入るだけの大きさがあるのでスタンドが全体として横に広がっているというわけです。日本で言えば、競馬場のスタンドのような感じでしょうか。
傾斜がほとんどないので、1階の立見席(大衆席)の人たちなどは、たぶん試合展開なんかよく見えないんじゃないかと心配になりました。