■全面改装されつつも外観は残したスタジアム

 それから35年後、僕は再びマラカナンを訪れました。

 2013年のコンフェデレーションズカップの時です(そして、ロシア組織委員会主催のレセプションでウォッカをしこたま飲んで記憶を飛ばしてしまったわけです――「蹴球放浪記」第38回「2013年ブラジル・コンフェデ杯、ウォッカとコパカバーナの記憶」の巻)。

 スタジアムは、2014年のワールドカップに向けて全面改装されていました。

 かつては楕円形のスタンドでスタンド最前列からタッチラインまでかなりの距離があったのが、専用スタジアムらしく、長方形のスタンドがラインのすぐそばまで迫る構造になっていました。また、2層式だったスタンドは1層式となり、かなりの勾配があるスタンドになっていました。

 まあ、ワールドカップを開くためには当然の改修だったでしょう。

 ただ、嬉しかったのはスタジアムの外観は昔のまま保たれていたことです。

 昔のマラカナンは、当時の最新技術を使った巨大な屋根がスタンド全面を覆っていました。鉄製の巨大な大屋根はすべて片持ち梁で後方から支えられていました。しかし、鉄製の屋根はかなりの重量になったため、梁はかなり太くて無骨な構造となりました(工事が大会開幕に間に合わなかったのも、この屋根を支える梁が難工事となったからでした)。

 そして、その太い梁が並ぶ姿こそ、マラカナンの外観を特徴づけていたのです。

 2014年に向けた改装で、屋根も軽量のテフロン製の物に変わりました。ですから、構造的には太い梁はもう不要だったはずです。しかし、マラカナンというブラジルという国とリオデジャネイロという都市を代表する建造物の記憶を永遠に保つために、片持ち梁は古い大屋根の時代の姿をそのまま保っていたのです。

 東京の国立競技場も、旧競技場時代の記憶をもっと大事にしてほしかったのになぁ。

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