■悔しさを笑みで覆ったもう1人の選手
この試合では、荒木以外にも悔しさを笑みで覆った選手がいた。フォワードのエヴェラウドだ。
チーム全体では徳島がやりたい形をことごとくさせず、後半は被シュート0。完勝という言葉が当てはまる試合となったが、エヴェラウド個人はなかなかゴール前でプレーすることができず、中盤に降りたりサイドに流れたりしてボールを受けるという形でどうにか試合に入ろうとしていた。
しかし、ディフェンダーを背負って、あるいはサイドで何人もに囲まれてボールをコントロールしなければならなかった彼はボールロストの回数も増えてしまい、フォワードが本来望むような決定的な場面を迎えられないことに自ら拍車をかけてしまっていた。
そんなフラストレーションが溜まる展開で後半にようやく迎えたゴール近くでの決定機を、この日の背番号9は仕留めきれなかった。
すると、ゴールネットを揺らすことが出来なかった彼は、苛立ちを見せるわけでも自身に悪態をつくわけでもなく、笑みを浮かべて小さく残念がった。
自身のことを「ハートでプレーするタイプ」と評する彼がこういう場面で悔しがる姿は過去に何度も見たが、この試合では違っていた。昨シーズンのJ1得点ランキングでは18ゴールで2位に名を残した助っ人は、今シーズンのリーグ戦ではここまで僅か1ゴール。毎試合結果が欲しくてたまらないはずだが、なぜか表情には今まで以上に余裕があった。