■2022年カタール・ワールドカップの戦い方

 ロシア・ワールドカップでは日本代表は1勝1分の成績で3戦目のポーランド戦を迎えていた。グループはポーランドの脱落が決まっていただけで、コロンビアと日本、セネガルの3チームが混戦状態で、日本は引き分け以上で勝ち抜きが決まるという状況だったが、ポーランドに敗れれば敗退の可能性が高かった。

 だが、そこで西野朗監督は先発6人を入れ替えるという大ギャンブルに出たのだ。ラウンド16以降に戦える態勢を整えるためだった。

 そして、ポーランドに1点を先行された中で、西野監督は「0対1のままゲームを終わらせる」という、さらに大きなギャンブルに出て、日本はセネガルと勝点や得失点で並んで、フェアプレー・ポイントの差で2位となってラウンド16進出を決めたのだ。

 西野監督の選択は内外から批判を浴びたのだが、ラウンド16で優勝候補の一角のベルギー相手に大激戦を繰り広げたことで、批判を封じ込んでしまった。

 いずにしても、あのような大きなギャンブルができる日本人監督は、超楽天的な性格の(FW出身の)西野監督しかいないだろう。そして、(ボランチ出身の)森保監督はより慎重な性格であり、現実的な采配を持ち味とする。そして、一つひとつ積み上げて長期視野に基づいてチーム作りが出来るところが魅力の指導者なのである。

 フランス戦で主力を休ませるという選択は、たしかにギャンブルではあったし、せっかくうまく機能しているチームに変更を加えることでフォームを崩す危険もあった。だが、やはり、現在の日本の戦力で、ブラジル、スペイン、メキシコという強豪を相手に6試合目まで戦うとしたら、どこかで“体力”の温存を図るべきだった。

 来年11月にカタールで開催されるワールドカップでも、似たような状況になる可能性はかなり高い。その時に、ギャンブルすべきなのかどうか。日本サッカー協会の技術委員会では、当然東京オリンピックの戦いの事後分析が行われるだろうが、そうした状況での基本的な考え方を詰めておいた方がいいのではないだろうか。

 もちろん、その時の選手のフィジカル的、メンタル的なコンディションを見て、最終決断をするのは森保監督なのではあるが……。

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