■なぜ、鉄壁の守備が破られたのか

 開始早々の失点……。かつては、世界の戦いで何度も経験した敗戦パターンである。

 たとえば、2004年のアテネ・オリンピック。DFには田中マルクス闘莉王がおり、前線には大久保嘉人や平山相太がいて、曽ヶ端準小野伸二がオーバーエイジとして加わったチームだったが、初戦のパラグアイ戦では開始5分で先制ゴールを許し、その後点の取り合いとなったものの3対4で敗れ、続くイタリア戦でも3分にダニエレ・デロッシ、8分にアルベルト・ジラルディーノに決められ、その後、追撃したものの2対3と初戦同様に1点差で敗れて連敗。最終ガーナ戦で勝利したものの、グループリーグ最下位に終わっている。

 当時、監督を務めていた山本昌邦氏は開始早々に失点が多い現象を「筋肉量の少ない日本人選手は、持久系は強いものの無酸素系運動で劣る。そのため、相手がフルパワーで来る序盤は劣勢になる」と説明していた。

 その他の大会でも、日本代表が前半の早い時間帯に失点して苦しむ姿を僕たちは何度も目撃したものだった。

 そんな当時のことを思い起こせば、守備が安定した2021年の東京オリンピックの日本代表の姿を見ると、まさに隔世の感を抱かざるを得なかった。

 だが、メダルを懸けて戦ったメキシコ戦では、かつての日本代表と同じように開始早々の2失点で苦しい戦いを強いられることになったのだ。

 グループリーグで敗れたため、メキシコの本気度が高かったとも言われるが、しかし、グループリーグの2戦目は「死のグループ」と言われたA組の中では大変に重要な試合であり、メキシコの本気度が低かったとも思えない。

 3位決定戦で日本の守備が脆かったことの一番の原因は、やはり疲労の蓄積だったと思われる。

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