■レアンドロ・ダミアンやジェジエウが語っていた「ブラジルの強さの根底」

 ソレールとブライアン・ヒルは、試合の流れをはっきりと変えました。監督采配が的中してこのまま2点目を取れれば、スペインが勝利した確率は高まったと思います。実際にチャンスもありましたが、ここでブラジルが踏ん張りました。それも守備重視のシステムに変えることも、選手交代をすることもなく、90分間耐えたのです。

 もし負けていたら、ジャルディン監督は自国のメディアから批判されたでしょう。ただ、彼の目には同点ゴール決められたものの、大崩れはしていないと見えていたのだと思います。ボールは持たれてはいるけれど要所は締めて、最後にやられない守備はできていた。

 スコアはまだ1対1だし、守備のリズムはいい。逆に誰かを変えることで、チームのリズムが崩れることを嫌ったのでしょう。

 ブラジル人選手のタフさを目の当たりにして、川崎フロンターレのチームメイトだったレアンドロ・ダミアンジェジエウとの会話を思い出しました。

 去年のJリーグはコロナ禍で例年以上の過密日程だったのですが、彼らに「試合に次ぐ試合だし、移動もあって大変?」と聞いたことがあります。彼らからは「キツいけれど日本はブラジルに比べたら国土が狭いし、もっとタイトな日程でやっていたから大丈夫。ブラジルでは6、7時間バスに乗って移動するけれど、日本では2時間バスで1時間半飛行機とか。すべては時間通りだし、全然楽だよ」という答えが返ってきました。ブラジルの強さの根底を、彼らの言葉を通してのぞいた気がしました。

 ブラジルの選手たちは、幼少期からそういう遠征を繰り返している。心身ともにタフにならざるを得ない環境で揉まれていく。決勝戦のブラジルを見て、かつてのチームメイトのタフさを思い出しました。

(構成/戸塚啓)

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なかむら・けんご  1980年10月31日東京都生まれ。中央大学を卒業後03年に川崎フロンターレに入団。以来18年間川崎一筋でプレーし「川崎のバンディエラ」の尊称で親しまれ、20年シーズンをもって現役を引退した。17年のリーグ初優勝に始まり、18年、20年に3度のリーグ優勝、さらに19年のJリーグYBCルヴァンカップ、20年の天皇杯優勝とチームとともに、その歴史に名を刻んだ。また8度のベストイレブン、JリーグMVP(16年)にも輝いた。現在は、育成年代への指導や解説活動等を通じて、サッカー界の発展に精力を注いでいる。

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