■CBガルシアから始まったオヤルサバルのスーパーダイレクトボレー

 ブライアン・ヒルとソレールが入ったことで、後半のスペインは攻めの型が決まり、質が向上していきました。ソレールは前にポジション取りするだけではなく、ボールを受けに下りていくので、前半途中から左サイドでペドリがやり始めたように、右サイドでもローリングが機能しはじめたのです。両サイドが安定してきたことで、スビメンディにもボールが入るようになり、ボール回しの質が改善されました。2CB、アンカー、2インサイドハーフの持ち出しかたが改善され、ボールを奪われなくなったことで、徐々に押し込むことに成功したのです。

 同点弾はスーパーゴールでした。ソレールが中盤に下りてピックアップするところから始まり、相手を引きつけてスビメンディ経由でエリック・ガルシアへボールが戻る。

 ここからのボールの動かしかたがポイントです。

 エリック・ガルシアは隣の右SBではなく、ひとつ前の右ウイングへ飛ばしの強いパスを入れました。エリック・ガルシアから右SB経由で右ウイングへパスをつなぐと、各駅停車になるのでブラジルの組織はスライドしやすくなり、崩れにくいです。クラウジーニョが右SBにプレッシャーをかけることで、そのプレスに連動してアラーナがタイミングよく右ウイングへ寄せることができるからです。

 そのプレスを回避するために、ガルシアから右SBではなく右ウイングへひとつ飛ばすことで、クラウジーニョを置き去りにしてプレスを回避させます。左SBが自分のタイミングではないタイミングで、右ウイングに食いつかざるを得ない状況へ持ち込んだのです。

 この場面ではブライアン・ヒルが右ウイングだったので、彼に入ったときにアラーナが高い位置で食いつきました。その動きを見て、ソレールはアラーナがいるべきスペースへ侵入しました。本来ならば左のCBがカバーをするポジションですが、パスをひとつ飛ばされたために間に合いません。カバーのいない左サイドを攻略したソレールは強く速いクロスを入れ、オヤルサバルがフルスプリントでスーパーダイレクトボレーを突き刺したのです。

 ニアゾーンを攻略する際には、「一個飛ばしの斜めパス」が非常に効果的です。ウイングやサイドハーフの選手に一個飛ばしでパスを入れられると、SBは自分の背後のスペースを空けて高い位置で食いつかざるを得ない。そうすると、SBの背中に走れるのです。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4