53年ぶりのメダルはならなかった。
8月6日に行なわれた3位決定戦で、日本はメキシコに1対3で敗れた。敗因はひとつではないだろう。ただ敗因を探ることは建設的な作業でもある。
川崎フロンターレと日本代表で数多くの経験をしてきた中村憲剛さんに、今回も分析をお願いした。ゲームのディティールを紐解いていく視点はいつもどおりに鋭くかつ的確で、日本サッカーが抱える根本的な課題もあがった。これまでよりも厳しい論調になっているかもしれないが、それも日本サッカーへの熱い思いがあるからこそである。
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準決勝に負けて3位決定戦に臨むという状況は、両チームともに共通していました。そこは平等だったのですが、決定的に違ったのは一度顔を合わせたグループリーグで「勝ったチーム」と「負けたチーム」の、この試合に臨むにあたっての心構え、メンタルでした。
メキシコには、同じ相手に2度は絶対に負けられないというプライドもあったと思います。ましてや、五輪という大舞台ではなおさらです。一方の日本は、グループリーグで勝ったことで自分たちはそう思っていなくても「一度勝っている相手だから」と周りから見られ、気を引き締めて臨まなければいけない立場でした。
直前に勝ったチームがメンタル的に受け身になりがちなのは、僕も現役時代に経験したことがあります。当たり前ですが、どちらもメダルに賭ける思いは強いはずで、それが結果の要因のすべてではないと思うのですが、両チームの背景の違いは無視できないと、試合の立ち上がりを見てすぐに感じました。
これまでの5試合に比べると、立ち上がりの日本からはいつもの燃えるような熱量といったものが……そういうものをより感じさせたのはメキシコで、日本からは彼らよりも淡泊な印象を受けました。
ひとつのボールを巡っての球際の激しさや、ラインを割ったか割っていないかについて主審や副審に対する圧のかけかたもそうです。さらには、気持ちのこもったプレーに対する周りやベンチからの鼓舞や、ファウルのジャッジを受けた際のリアクションなども。日本にももちろん熱があったと思いますが、そこにより強いこだわりを持って試合に入っていたのはメキシコでした。少なくともテレビで観ている僕には、そのように映ったのです。
PKを取られたシーンも、いつもならみんなもっと激しく反応していたのではないかとも思いました。主審の判定はリスペクトを持って受け入れるのが前提で、詰め寄るのもルール違反なのですが、個人的にはペナルティエリアの中か外かが微妙だなと思いましたし、PKかFKかでは大違いです。もっと主審に働きかけても良かったのではないでしょうか。主審の決定をすんなりと受け入れるあまりに従順な姿に、少し違和感を覚えました。メキシコが同じシチュエーションになったら、カード覚悟で主審に詰め寄り、どうにかして状況を変える努力をしたのではないかと思いました。