■身体をぶつけて前に進むメキシコの攻撃でさらに消耗……

 疲労は間違いなくありました。これは肉体的にも、精神的にも。

 ニュージーランド戦はPK戦まで、スペイン戦も延長までもつれたここまでの勝ち上がりかた、日本の戦いかたとサッカーのスタイルを考えると、中2日の6試合目で消耗するのは必然だったと思います。スタイルとは前線から積極的にプレスをかけて、後ろも押し上げる守備、どんどん前に出て行く攻撃を指します。

 また、準決勝のスペイン戦では、いまだかつて経験したことがないぐらいに、心身ともに追い込まれました。そこまで追い込まれても、みんなでスペインに食らいついた。それにもかかわらず、延長戦の最後の最後で失点し、負けてしまった。心身ともにダメージは甚大だったと思います。

 メキシコもブラジルに延長戦で負けていますが、彼らの戦いかたは日本とは違います。守備ではプレスにいくときといかないときのメリハリを持つ。攻撃ではボールをていねいに保持しながら、相手の出かたを見てロングボールを使うこともためらわない臨機応変さがある。それに対応できる個人の能力を生かす。攻守でチームとしてのベースがあり、そのベースを守ったうえで一人ひとりの個性を発揮しながら統一感を持ってやっていた、という印象です。 

 精神面、体力面と話をしてきましたが、もうひとつはボールを持ったときのクオリティです。

 オンザボールの局面で、メキシコにはスペインとまた違う狡猾さがありました。パスワークを用いるところは似ていますが、1対1の局面で、メキシコはより身体をぶつけて進もうとする好戦的な選手が多かった。それに対応することにより、ただでさえ疲労していたところからさらに消耗させられてしまう、という側面もありました。

 蓄積していった疲労や、試合中の消耗の激しさについては、メンバーを固定してきたことに関連すると思います。これについては、「そうしないとここまで勝ち残れなかった」と言うこともできます。初戦の勝利によってスタメンと戦術を含めて「こう戦うんだ」という道筋が見えたことで、逆に色々なタイプの選手をスタメンに組み込めず、動かしにくくなったのではないかと思いました。

 メキシコもグループステージの試合と、スタメンがひとりしか変わっていませんでした。それでも、メキシコより日本に疲労の色が濃かったのは、技術、戦術だけではない自国開催のプレッシャー、責任感、使命感といった精神的な圧力が、知らず知らずのうちに選手たちの身体と心を縛りつけていったからではないでしょうか。僕自身の経験に照らしてみても、精神が疲労を凌駕する試合が稀にあるのですが、今日はそうはならなかったという印象です。

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