■「ゆりかごパフォーマンス」誕生の瞬間
当時の日本のルール解釈では、ボールが飛んだ方向にいる選手はオフサイドとされていた。日本サッカー協会の審判委員会も、大会後には「あれは明らかなオフサイドではないか」と国際サッカー連盟(FIFA)に質問状を送った。しかしFIFAからは「ボールが飛んだ方向にいても、プレーしない意思を明確にしていたらオフサイドではない」との回答がきた。オフサイドが実質的に大きく変わる「新解釈」だった。
そしてこのとき、ベベットが得点後に見せたのが、いまや「定番」のひとつとなっている「ゆりかごパフォーマンス」だった。彼は両腕を体の前で顔に向けて折ったまま、左右に揺さぶりながら走った。そこにDFマジーニョとロマリオが加わり、タッチラインのところで並んだ3人が同じ動作をしたのだ。試合後、ベベットは「あれは生まれたばかりの息子マテウスに贈ったもの」と語った。「ゆりかごパフォーマンス」の誕生である。
Jリーグでも、毎週のようにこのパフォーマンスを見る。自分に子どもが生まれたわけではなく、チームメートの誰かに、あるいはチームスタッフの誰かに子どもが生まれたときもやるから、必然的に多くなるのだ。「ゆりかご」はそう長い時間はかからないので、私にとってはまあ、「許容範囲」と言える。