■着地に失敗した「宙返り」の悲喜劇

 身体的能力を見せつけるもうひとつのゴールパフォーマンスは「後方宙返り」である。1980年代から1990年代にかけてメキシコ代表で活躍したウーゴ・サンチェスが得意とし、その後世界中の「身体能力自慢」の選手たちに真似されている。

 しかし誰も彼もがその自慢どおりの宙返りをできるわけではない。2014年のワールドカップ・ブラジル大会では、ドイツ代表のFWミロスラフ・クローゼが「前方宙返り」で回りきれず、着地で失敗して尻もちをつき、失笑を買った。同じ2014年の10月には、インドで同点ゴールを決めて大喜びした選手が「後方宙返り」に失敗し、頸椎を損傷して病院に運ばれ、5日後に死亡するという悲劇も起きた。

「ゴールパフォーマンス大国」はブラジルだ。1994年のワールドカップ・アメリカ大会、準々決勝のブラジル対オランダ、後半18分に記録されたブラジルの2点目は、世界に大きな衝撃を与えるものだった。

 オランダGKエド・デフーイのキックをブラジルが大きくはね返したが、ボールの落下点にいるブラジルFWロマリオは完全にオフサイド。しかしわずか1メートルのところにボールが落ちてきてもロマリオは知らん顔をしている。オフサイドポジションのロマリオを見てオランダのロナルド・クーマンがボールをワンバウンドさせて見送ると、そこにブラジルFWベベットが走り込む。そしてドリブルで前進し、そのままゴールを決めてしまったのだ。

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