大住良之の「この世界のコーナーエリアから」連載第67回「過剰なゴールパフォーマンスの愚」(1)動物行動学で「18種類に分類」されたゴール後の行動の画像
ゴールパフォーマンスの「始祖」エウゼビオ(1966年W杯イングランド大会のハンガリー戦のゴール後)写真:AP/アフロ
ゴールの喜びは、ピッチに立つチームメートやベンチの仲間、スタジアムやテレビの前のサポーターとともに分かち合うもの。派手なゴールパフォーマンスはスタジアムの華だ。新しいパフォーマンスを思いつき、その練習を重ねても披露するチャンスがないアタッカー。大舞台でゴールを決め、どう喜んでいいのかわからないディフェンダー。どちらも「サッカーあるある」だが、ゴールした選手が喜びを爆発させる様は見ている側も幸せな気持ちになるーー。

■影響が大きかったカレッカのダンス

 抱き合って喜ぶ程度ならいい。しかし私は得点後の過剰なパフォーマンスを嫌っている。

 日本では「ゴールパフォーマンス」と言う。しかしこれは「和製英語」で、英語では通常「goal celebration(得点のお祝い)」と言う。ルール(競技規則)上では、英語版では「Celebration of a goal」とされており、日本語版では「得点の喜び」と訳されている。

 ストライカーたちには、それぞれ固有の「ゴールパフォーマンス」がある。最も有名なのは「カズダンス」である。現在横浜FCでプレーする三浦知良(カズ)は、ゴールを決めるとテレビカメラのあるコーナーのほうに走り、両腕と両足をすばやく交互に動かす「サンバダンス」を踊る。最後は左手を股間に置き、右手を高く上げる。ちょっとセクシーだ。

 このダンスは、カズがブラジルにいた当時にブラジルきってのスターだったカレッカ(後に柏でもプレー)がやったものを真似たと言われている。世界的には、1990年ワールドカップ・イタリア大会で大活躍したカメルーンのロジェ・ミラがやった「マコサダンス」が非常に有名だ。

 だがどうも、ミラの「マコサダンス・パフォーマンス」は、同じワールドカップでカレッカがやったものを真似たものだったらしい。ワールドカップ前の試合で、ミラは得点を挙げるとただただコーナー近辺まで走り、うれしさのあまり飛び跳ねているだけだったからだ。

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