■パフォーマンスの動物行動学

 今季のJリーグで、カズはまだいちども「カズダンス」を披露できていない。もちろん、得点を記録できていないからだ。世間には、あるいはいくつかのテレビ放送局にとっては、カズの活躍をという期待より、「カズダンスを見逃してはならない」という意識が見え見えだと感じるときがある。それは本当にサッカー選手としてのカズをリスペクトしているのだろうかと、少し疑問になる。

 ともかく、ゴールパフォーマンスは、いまやサッカーと不可分な一部になってしまった観がある。はやりすたりもあるが、次から次へと新しいパフォーマンスが生み出され、バリエーションは年を追ってふえるばかりだ。プロだけでなくアマチュアの試合でもパフォーマンスは当たり前。シュートを決めるための練習より、ゴール後のパフォーマンスをあれこれ考え、その練習に時間を割くチームのほうが多いのではないかと心配だ。

 元来は動物行動学者で、『裸のサル』『マンウォッチング』などの著書で世界的に有名になった英国人のデズモンド・モリスは、1981年に『The Soccer Tribe』という本を著して大ヒットさせ、2年後の1983年には、日本でもそれを翻訳した『サッカー人間学』(岡野俊一郎監修/白井尚之訳)という立派な本(当時の価格で4800円だった!)が小学館から出された。Jリーグの足音などかすかにも聞こえず、「サッカー冬の時代」と言われたこのころに、こんなに立派な本が出版されたという事実は驚くばかりだ。

 その『サッカー人間学』に、モリスは「勝利のディスプレイ」という一章を設け、写真を含めて10ページにもわたってゴールパフォーマンスを取り上げている。そしてその歴史や当時行われていた18種類の「パフォーマンス」を解説している。

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