大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第66回「オリンピックの時間ですよ」(3) 真っ白な「全日本」チームからもらった誇りの画像
2016年リオ大会。日本はグループの最終戦でスウェーデンとあたり、矢島信也のゴールで1-0の勝利を収めたが、コロンビアがナイジェリアに勝ったため3位となり、敗退が決まった。ブラジルでも地元チームが出場する試合以外はオリンピックのサッカーに対する関心は薄く、サルバドールのスタジアムはがらがらだった。(c)Y.Osumi
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もし東京オリンピックで、日本代表が6試合を勝ち抜いて金メダルを獲得するとしたら、それを見届けるのは誰だろう。無観客開催でないのなら、抽選でゴールドチケットが当たった少人数の幸運な人たち。あとはIOCなどの大会関係者、スポンサー企業の人たち。そして、取材パスを手に入れた報道関係者だ。日本ではオリンピックの取材パスはほとんどが「運動記者クラブ」に配分される。サッカージャーナリストがそれを手にすることはまずない。できることならサッカー競技限定で、日本サッカーの当事者でもある信頼できるジャーナリストたちが、その瞬間に立ち会って取材できればいいのだが――。

■私の人生の転機だったかもしれない

 とはいっても、少なくとも日本の男女の全試合を生中継で見られる(と期待している)のは、昔のオリンピックを考えれば夢のような話だ。

 私のオリンピック・サッカーの最も古い記憶は、1964年10月14日の夕刻のことだった。私は中学1年生だった。なぜかその日は帰りが父といっしょになり、バス停から家まで歩きながら、父が「サッカーが勝ったぞ」と話してくれたのを鮮明に覚えている。それは、日本がアルゼンチンに0-2から大逆転で3-2の勝利を収めた歴史的な日だった。しかし当時まだサッカー部に入部しておらず、興味もなかった私は、「ふ~ん」と言っただけだった。なぜあんな何げない父との会話をはっきり覚えているのだろうか。もしかしたら、それは、私の人生をサッカーというものに押し出す運命の最初の一撃だったのかもしれない。

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