■アビスパ福岡へは両サイドバックが突破口

 続く第20節は、再びホームの埼玉スタジアムに戻って中3日でアビスパ福岡との対戦した。メンバーは湘南戦の構成に戻ったが、GKは鈴木から西川に、MFは金子が柴戸に変更となった。

 トップは再びユンカーと小泉の先発である。果たして、湘南戦のようにうまくトップにボールが収まるのか……。僕は、まずそこに注目した。

 しかし、ここがJリーグというリーグの難しいところだ。そうした「ストロングポイント」があると、すぐに相手チームが対策を講じてくるのだ。まして、アビスパは守備組織の強いチームだし、長谷部茂利監督も戦術家だ。

 つまり、浦和が湘南戦と同じようにトップのユンカー、小泉をターゲットにしてパスを集めようとしても、ストッパーの宮大樹ドウグラス・グローリをはじめとする福岡のDFがパスが入る瞬間に激しく体を寄せてパスを阻止してきたのだ。そのため、ユンカーはなかなかボールを収められなくなってしまう。少なくとも、湘南戦のようなスムースさはなくなってしまった。

 そこで、浦和が頼ったのがサイドバックの攻撃参加というもう一つの武器だった。

 とくに前半から目立ったのが左サイドバックの明本考浩の上がりだ。

 もともとがMFだった選手だ。タッチライン沿いのオーバーラップだけでなく、内側のレーンを使って攻撃に参加し、MFとしてプレーする時間が長くなった。それが戦術的に準備された動きであることは、明本が上がった裏のスペースをMFの伊藤がしっかりと埋めていたことからも分かる。

 前半の終了間際には明本からのクロスでチャンスが2度生まれたし、後半に入って最初のレッズのチャンスでは右サイドで西大伍を起点にパスがつながり、伊藤と相手選手が絡んでこぼれたボールを福岡のペナルティーエリア右で明本がシュートを打つ場面もあった。「なんで左サイドバックの明本があんなところに?」といった驚きのあるポジショニングだった(その前に、左サイドからドリブルで中央までボールを運んだ後のポジション取りだった)。

 前半11分の先制ゴールはドリブルで持ち込んだ小泉のスーパーゴールだったが、これも右サイドバックの西が小泉のポジションを見て正確に入れたパスがきっかけだったし、2点目は左CKを明本が頭で決めたもの。

 つまり、「トップへのくさび」という攻め手を消された浦和は、両サイドバックを突破口として福岡戦は2対0で完勝したのである。

※第3回につづく
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