■試合の行方を左右するのはウイングバック

 これは勝つためというよりも負けないための戦い方だが、決勝トーナメントには相応しいアプローチだった。

 キックオフ直後こそ不安定さを垣間見せたが、試合が落ち着くとドイツはカウンターでティモ・ヴェルナーを走らせること以外に攻撃の手段を失ってしまった。

 しかし、攻撃の手段を見つけられないのはイングランドも同じだった。守備を目的とした3-4-3のミラーゲームはその目的を達成しようとしていたが、そこからどう勝つかが問題だった。

 ミラーゲームの状態は、簡単に言えば対面の相手を上回ればいいのだが、トップレベル同士ではそれが簡単にはいかないから守備戦術として機能する。

 3-4-3で膠着状態に陥った場合、中央の選手だけで決着をつけることは困難を極める。試合の行方を左右するのはやはりウイングバックの場所であり、キミッヒとゴセンスにつきっきりで守備をしているそこの選手を、いかにして攻撃時に相手から浮かせることができるかということにチーム全体で取り組むことになるが、前半の時点ではそのアイデアが見えることはなかった。

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