■東京は世界有数の「スポーツ貧困都市」

 サッカーに限らない。東京で何かスポーツをしようとすれば、仲間は集まっても、競技をする施設を確保できなければ活動できない。それでも活動したいという人びとは公園の片隅でトレーニングしたり、他の競技の人びとと狭い広場(面白い言葉だが、よくある)を分け合って活動している。しかしそうした状況で競技を楽しむことができず、離れていってしまう人もたくさんいる。

 毎月数万円の会費を払ってビルの中にある民営のスポーツクラブに通い、自転車マシーンをこぎ、ランニングマシーンでハムスターのように走り、トレーニングマシーンでベンチプレスをしようというなら、チャンスはいくらでもある。しかしそれはスポーツの喜びのほんの一部に過ぎず、仲間といっしょに広いグラウンドで思い切り走り、ボールを追うという喜びと比べられるものではない。

 そして、幸運にも抽選で当たった河川敷のグラウンドに行けば、土ぼこりの立つグラウンドにあるのは、一対のゴールと、真夏には堪え難い悪臭で満たされる簡易トイレが1個か2個。当然のことながら、更衣室やシャワー室などを備えたクラブハウスなど望むべくもなく、男子チームは平気でそのあたりで着替えるが、女子だと、トイレを順番に使って着替えるしかない。前の時間帯で使っていた男子チームが私たちの選手の目の前でお尻丸出しで着替えるのを、私は何度たしなめただろうか。

 そう、東京という世界有数の巨大都市は、世界有数の「スポーツ貧困都市」なのである。そして私たちは、極悪な状況でなんとか活動をしている「スポーツ難民」なのである。スポーツをしたあとシャワーなど浴びずに帰ると話したら、オーストラリア人たちは何と言うだろうか。グラウンドにクラブハウスがないと話したら、東南アジアの人びとはどう思うだろうか。

第2回につづく
PHOTO GALLERY 【画像】東京五輪男子代表18名とバックアップメンバー
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4