なぜ私が東京オリンピックに反対したのか(1)東京は世界有数の「スポーツ貧困都市」の画像
新国立競技場 撮影/編集部
【画像】東京五輪男子代表18名とバックアップメンバー

東京という世界有数の巨大都市は、世界有数の「スポーツ貧困都市」なのである。そして私たちは、極悪な状況でなんとか活動をしている「スポーツ難民」なのである。世界からトップアスリートを迎えて「スポーツの祭典」をする都市の住民が、「スポーツ難民」であるというのは、どんな皮肉なのだろうか――。〉(本文より抜粋)

コロナ禍が来なくても、東京は、日本は、オリンピック招致に手を挙げるべきではなかったのかもしれない。オリンピックへの幻想はすでにはぎとられているーー。

■「もはやオリンピックの時代ではない」

 「これからはオリンピックではない。世界選手権だよ」

 牛木素吉郎さんからこんな話を聞いたのはいつごろだっただろうか。

 牛木さんは私の「師匠」である。読売新聞運動部の記者として長く活躍し、その間にオリンピックやワールドカップの取材を重ねてきた。ワールドカップ取材は1970年のメキシコ大会から2014年のブラジル大会まで、実に44年間、12大会に及ぶ。同時に、日本で最初のサッカー専門雑誌(写真誌を除く)である『サッカー・マガジン』においては、1966年の創刊時から2006年まで40年間にわたって時評のコラムを連載した。

 私がサッカーを始めたのは1966年のことだった。唯一の情報源である『サッカー・マガジン』は、毎月、広告を含め隅から隅まで読み、牛木さんのコラムや特集記事は何回も繰り返し読んで頭に叩き込んだのだから、私の「サッカー思想」は、半分以上、いや、もしかしたら大半が牛木さんの受け売りかもしれない。

 その牛木さんが、「もうオリンピックの時代ではない」と言う。オリンピックが純粋な「平和の祭典」だった時代から「ビッグビジネス」の時代になって久しく、数十もの種目を一都市で開催することの弊害、開催国の過剰な負担も顕著になっていた。さまざまな国の政府がさまざまな政治的理由で相変わらずオリンピック開催に立候補し、開催を争っているが、巨大化する一方の大会は、いまや少数の大国にしか背負うことのできないものになっている。

PHOTO GALLERY 【画像】東京五輪男子代表18名とバックアップメンバー
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4