■ベルギーの真の魅力
ただし、彼の真の魅力は他にある。
それは自チームをコントロールできるスマートな選手であるということだ。デ・ブライネが不在となったこの試合ではその部分が際立っていた。
プレスやパスの方向を指示したり、冷静にフリーの味方にパスを出したりするだけではない。安易に自分を使わせないように自らDFに重なり、パスを出しにくくさせてピッチを広く使うよう促したり、次にどうするべきか味方が逡巡していればそこから動いて一旦パスを引き出したり、と最前線にいるルカクはボールを持たずともチーム全体の攻撃ペースというものを作り上げている。
しかも、そうやってペースを握ってからも、フィニッシャーとして味方に使われるのではない。彼が先に動くことで味方のパスを引き出す。パスが先にあるのではなく、どういう質のパスをどういうタイミングでどこに出すか、というメッセージが込められた走りでボールホルダーの方を使う。この試合でダメ押しとなった3点目の場面もそうだ。
剛、柔、そして賢。そんなルカクがタレント軍団を最前線から統率するベルギーが好発進した。