■見せることができなかった“王者の姿”

 それでも83分までにスコアを3-1としたが、残り7分を耐えきれずに試合は3-3に。浦和レッズに劇的な同点弾を許して合計スコアを4-4とされ、アウェイゴールの差で準決勝進出を譲ってしまったのだ。

 昨年、あるいは今年前半の川崎が誇る“悪魔の3トップ”は相手チームにとって脅威だった。レアンドロ・ダミアン家長昭博、三笘薫の3人で構成される前線は、残忍なほどに相手守備陣を崩し続けたのだ。

 しかし、三笘が移籍したことで、潮目は変わった。ここまで長谷川竜也と宮城天が先発の座を争っているが、三笘ほどの推進力は現時点で持ち合わせていない。分かっていても止められないドリブルを持つ三笘が左を崩し、その逆サイドを家長や山根がコンビネーションやアイデアで崩す“非対称性”こそ、川崎の強さの源泉だったが、それは今は見せることができない。

 さらに、そのサイド攻撃を中盤で支えた田中碧もいない今、川崎はピッチを必ずしも支配できなくなっている。ルヴァン杯準々決勝の2戦は、いずれも浦和レッズがボールを支配して川崎がそれを受ける形となった。異次元のボール保持率を誇った王者の姿を見せることはできなかった。

 それはリーグ戦も同様で、東京五輪以降の5戦で川崎は2勝2分1敗。五輪以前は無敗どころか、引き分けすら1試合でストップさせていたのだが、8月25日の福岡戦で今年初めての黒星まで喫してしまっただけでなく3戦連続で勝利から遠ざかってしまった。三笘ロスと田中ロスの影響は、引退した中村憲剛氏の不在以上に大きな影響を与えているのだ。

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