■サッカーをどんなゲームにしたいのか
イングランドでヘディングの危険性が大きくクローズアップされたひとつのきっかけは、元イングランド代表FWジェフ・アストルが2002年に59歳という若さでなくなったことだった。死因が「ヘディングのし過ぎによる脳損傷」とされたことが、サッカー界に大きなショックを与えた。子どものころの話ではない。プロ選手としてのヘディングである。
アストルはヘディングの名手として知られ、豪快なヘディングシュートで数多くのゴールを記録した。しかしアストルの死因を調べた検視官は、本革製で雨の日にはかなり重くなった当時のボールが彼の脳にダメージを与え続け、ボクサーがかかる「慢性外傷性脳症(CTE)」だったと確認した。今日、ボールは人口皮革製になり、水を吸って重くなることはない。しかしヘディングが脳にまったく影響を与えなくなったわけではないだろう。
ヘディングを禁止するなら、サッカーをどんなゲームにするのか。さまざまな角度から意見を出し合っておくのは、けっして無駄ではない。