■他の2人はピッチ脇に立っていても

「ハーフタイムで(選手を)代えるなら代えるというのも手としてあった。早めに選んで交代したが、その一瞬で点を入れられた」

 試合後、指揮官がこう振り返ったように、56分に失点。そしてそのわずか1分後に3枚替えを行う。正確には、すでに交代カードを用意していたが、その前に失点してしまったのだ。先発したウイング2人とインサイドハーフ1人を交代させた。試合について「焦れずに、CBとアンカーのところで動かせれば良かった」とも話した鬼木監督だが、攻撃陣に不満があるのは明白だった。

 その交代で新たに右ウイングに立ったのが家長昭博だ。同じタイミングで交代した三笘薫橘田健人は、交代前に早々にピッチ脇に立って交代するのを待っていたのに対し、背番号41は、ギリギリまでベンチ裏で体を動かした。鬼木監督が「早く来い」と怒るのも関係なく、寡黙なファンタジスタは体への負を負荷を強めていった。残り時間は30分強。ピッチに立った瞬間から試合に入ってみせるという気迫が感じられた。

 家長は、常に自分のリズムを持っている。歩くときはゆっくりと歩き、よほどのことでない限りその速度を速めない。それはピッチの上でも同じ。そのスプリントする姿はなかなかお目にかかれないし、その速度も本気のものではない。“速度とは別のものでピッチの上を支配してみせる”という強い意志にも感じられる姿がそこにはある。

 そんな男がこの試合で見せたあるプレーが、川崎の本気スイッチを押した。

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