■お札の出し方で尊敬を集めた

 ところが、ウェストポーチの中を見るとちょうど新札の束が入っていたのです。新札ですから、紙幣番号は連番になっています。これなら計算は簡単です。札束を出した僕はパラパラと番号を見ながら232枚をサッと抜き出して、会計係に渡しました。そして、紙幣数え係が1枚1枚数え始めました。まあ、これは彼らの専門ですから、手慣れたもの。アッと言う間に数え終わりました。ピッタリ、232枚ありました。

 すると、彼らの僕を見る眼が変化したのです。

「なんで、オマエは数えもしないで232枚を正確に抜き出すことができたあるか?」というわけです。

 彼らの眼が、彼らの驚きの気持ちを語っています。

 彼らは、この場で初めて僕に「合計1万1580ナイラ」という請求金額を伝えたのです。

「それなのに、札の枚数を数えもしないで、どうして正確に232枚抜き出すことができたのか」。彼らの眼は、まるで神の御業を見たかのような驚きの気持ちを表していたのです。

 こうして、ナイジェリアの奥地で僕は神のような存在になったのです。

 なお、ナイジェリアの名誉のために言っておきますが、ナイジェリアにも善人はたくさんいます。いや、たいていは善人ですし、中には気の弱そうなナイジェリア人だっていました。

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