■今季に詰まったペップの「初めて」

 シティはグアルディオラの到着以降、補強の方針が変わった。端的に言えば、アタッカーではなく、守備の補強に注力するようになった。グアルディオラはシティで守備の補強に、およそ4億2430万ユーロ(約551億円)の資金を投じている。

 ルベン・ディアス(移籍金固定額6800万ユーロ/約88億円)、ジョン・ストーンズ(移籍金5600万ユーロ/約72億円)、アイメリック・ラポルテ(契約解除金6500万ユーロ/約84億円)、ナタン・アケ(移籍金4530万ユーロ/約58億円)…。右利き、左利き、高いビルドアップ能力、対人の強さ、若手と、さまざまな個性を備えるセンターバックを指揮官は獲得してきた。

 こうして今季、R・ディアスとストーンズのセンターバックコンビが確立された。 先述したように、ラポルテ、アケ、R・ディアス、ストーンズといずれも高額な移籍金で加入した選手たちだ。そのなかでも、R・ディアスの加入は大きかった。1対1に強く、球際での激しさがあり、ボール奪取能力が高い。フィジカルに優れ、空中戦でも容易には負けない。それだけではなく、もう1人のセンターバックやサイドバックが空けたスペースのカバーリングを怠らず、クレバーさを兼ね備える。

 また、R・ディアスの加入で、ストーンズのパフォーマンスが上がった。一時、グアルディオラ監督の下で序列が落ちていたストーンズであるが、R・ディアスとの相性が非常に良かった。どちらが前に出て、どちらが下がるという“つるべの動き”が体現され、シティの守備に安定感がもたらされた。

「私は選手たちに勝利を求めたことはない。常に、良いプレーをするように要求している」

 2011年にグアルディオラが語った言葉だ。バルサ、バイエルン、シティと複数クラブで指揮を執ってきたペップだが、内容、結果、ともに非の打ち所がない。

 唯一欠けていたのが、バルセロナ以外でのビッグイヤーの獲得だ。バルセロナ(2008-12シーズン/14タイトル獲得)、バイエルン(2013-16シーズン/7タイトル獲得)と1クラブで4シーズン以上指揮を執った経験は、グアルディオラにはなかった。シティで初めて迎える、5シーズン目となる指揮の今季。これまでの経験すべてをピッチ上に還元して、ペップは新たな偉業を成し遂げようとしている。

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