「アンドレス・イニエスタを見た」(2)スペインで消えたティキタカを日本での画像
アンドレス・イニエスタ 横浜F・マリノスvsヴィッセル神戸(20210509) 撮影/原壮史

※第1回はこちらから

5月8日のバルセロナアトレティコ・マドリードによるラ・リーガの首位攻防戦をテレビ観戦した翌日、ヴィッセル神戸でプレーするアンドレス・イニエスタを見に行った。かつてのヨーロッパ王者バルセロナとスペインが失った華麗なパス・サッカーの残り香が、そこにはあった。昨年12月のACLで右脚を負傷し、今月1日のJリーグ・広島戦で復帰を果たしたイニエスタ。自身の37歳の誕生日である5月11日の14時に「重要な記者会見を行う」と発表した。この世界的な名手のプレーを見ることができる時間は、そう長くはないのかもしれない。

■バルセロナはすっかり変わってしまった

 スペインのラ・リーガをずっと見ていらっしゃる方にとっては“今さら”なのかもしれないが、ひと昔前に「ティキタカ」で一世を風靡したバルセロナというチームは今ではすっかり変質してしまった。

 10年ほど前、バルセロナは間違いなく世界最強のクラブだった。あのバルセロナの「ティキタカ」を前にしては、どんなチームも「ゴール前にバスを置いて」戦う以外に選択のしようがなかった。まあ、言ってみれば現在のJリーグにおける川崎フロンターレのような存在だったわけだが、それをスペインのラ・リーガやUEFAチャンピオンズリーグという世界屈指のレベルのコンペティションでやってのけたわけである。

 当時は、日本でもバルセロナを礼賛する言説が巷に溢れており、バルセロナというクラブの攻撃的なフィロソフィーやグアルディオラの戦術は未来永劫、不変のまま続くかのようにさえ言われていた。

 だが、あの当時、バルセロナが技術を生かして徹底してワンタッチ・パスを回すというやり方で世界を制覇できたのは、ジョゼップ・グアルディオラという天才的な指揮官がいて、しかもピッチ上にシャビ・エルナンデスとアンドレス・イニエスタという2人のパス・サッカーの申し子が立っていたからだった。

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