どうやら横浜FMの完全復活の姿が見えてきたようだ。2019年の終盤、マリノスは無類の強さを発揮して、優勝への一本道を走りぬいた。2連覇中だった川崎フロンターレには勝ち点10差をつけての見事な戴冠だった。しかし、そのサッカーは他チームに研究し尽され、昨シーズンの異例な過密日程はハードワークを前提としたサッカーを9位に埋もれさせた。そして2021年、階段を一歩ずつ上がってきたマリノスは、FC東京に完勝して、ついに優勝争いに名乗りを上げた——。
■オナイウ阿道がついに得点感覚に目覚めた!
5月1日のJ1リーグ第12節で横浜F・マリノスがFC東京を3対0で下してその好調ぶりをアピールした。前節の横浜ダービーでの5ゴールに続いて、東京相手にも3ゴールを奪い、得点力も安定してきたように思える(4月28日はルヴァンカップのベガルタ仙台戦でも5得点)。
そのFC東京戦では、ワントップのオナイウ阿道がハットトリックを達成した。
もっとも、3ゴールすべてがいわゆる「ごっつぁんゴール」で、「アシストしたエウベルの貢献度が8割」といった形でのゴールばかりだった。それに、FC東京の守備もきわめて甘かった。
だが、それでもこのオナイウ阿道のハットトリックは、横浜FMの今後にとって意味のある得点だったように思える。
1点目、2点目を振り返ってみると、どちらもエウベルが完全に抜け出してゴールラインに達する深い位置まで持ち込んだのだから、東京のDFとしてはエウベルに対応しないわけにはいかない。東京のCB渡辺剛がオナイウのマークを捨ててでもカバーに行くのは当然の選択だった。だから、オナイウ自身も相手DFと駆け引きをしたといっても、絶対優位の状況だったことは間違いない。
ただ、それでも3度にわたって「ごっつぁんゴール」を決めたことによってオナイウ自身、「点の取り方」が会得できたかもしれない。DFとの駆け引きによって自分が完全にフリーになった時のあの感覚。それを忘れずにいれば、もっと難しい局面でも相手のマークをはずすことができるようになるだろう。
ちなみに、オナイウは横浜FCとの試合でも2ゴールを決めており、さらに先制ゴールにつながるPKを獲得したのもオナイウだった。これだけ得点に絡んだのだから、彼はすでに「点を取る感覚(嗅覚)」に目覚めているのかもしれない。