■人と会わずにJリーグ取材

 昨年、4カ月もの中断からJリーグが再開されて以来、私たちは、選手や監督たちをスタンドの記者席からは見ても、直接顔と顔を合わせて話すことなど皆無になってしまった。スタジアムにつけばまず検温、2週間分の体温や体調の報告用紙を提出し、手指を消毒してから報道受け付けとなる。事前にJリーグから送られてきた入場用のQRコードをタブレットのカメラにかざして受け付けが完了し、首からぶらさげるADカード(おそらく、厳重に消毒されているはずだ)を受け取ると、そのまま記者席に向かうのである。

 以前のように印刷されたメンバー表が配布されることもない。席についてパソコンの電源を入れ、インターネットに接続して、Jリーグのメディア用データサイトからメンバー表をダウンロードする。そして画面を見ながらノートに書き写していく。

 ノートは、数少ない「石器時代」からまったく変わらないもののひとつだ。仲間の記者のなかには、タブレットにペン書きしている者もいる。こうすると、何年分ものノートを持ち歩けるのだというが、私は相変わらずコクヨのB5判のCampusノートを愛用している。筆記具も、相変わらずボールペンである。

 試合が終わると、ノートとボールペンの「石器時代」から、ふたたび「科学技術の時代」に戻る。メールで受け取ったURLから記者会見用のZoomにアクセスし、しばらく待つとビジターチームの監督がやってきて会見が始まるのである。

 Zoomだからといって監督が話す内容が変わるわけではない。しかし表情やしぐさなどから監督の心理を推測するのは難しいし、直接的なコミュニケーションを取れないのは、やはり寂しい。とは言っても、寂しいのは取材する私たちだけかもしれない。監督たちは、ときにいら立たしい質問をする記者たちの眼前にひとりでさらされる形の記者会見より、現在の環境を喜んでいるかもしれない。

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