■救世主となりうるトマ・レマルも……

 ディエゴ・シメオネ監督のもと、チャレンジャーとして勢いのあるサッカーを見せてきたアトレティコだったが、このところその勢いがない。首位の座を明け渡したくないために自ら積極的な行動に出ることが怖くなってしまっているかのようで、ペースを握らせない、あるいは奪い返す、という部分が消えてしまっている。

 守備と攻撃は繋がっているので、守備の積極さが失われると攻撃でも同じことが起こる。ゴールを奪うためのボール回しではなく、ただ淡々とボールを繋いでいるだけのサッカーになってしまうその様子は、調子の悪さを際立たせている。

 全体が上手くいかなくなってしまっている中、スアレスという1人で試合を決めてくれる選手がいることはアトレティコにとってせめてもの救いだろう。

 しかし、ジョアン・フェリックスが怪我を抱え、ムサ・デンベレは練習での失神から復帰に慎重さが求められている今、ロングボール1本でスアレスに全てを託すことは現実的ではない。スアレスに加えてもう1人攻撃の手段が欲しいところだが、チーム全体が勢いを失っている中ではマルコス・ジョレンテもその良さをなかなか発揮できない。

 そこで救世主となり得るのがトマ・レマルだ。中盤から1人でボールを前に運ぶことができるレマルは、どうしようもなくなってしまっている今の状況で唯一と言っていいほど攻撃の形を作っている。チームとして機能していない状況で、単独で突破してくれる存在は貴重であり、スアレスがエリア内でフィニッシャーになれることにも繋がる。

 ところが、シメオネ監督はこの日もレマルを途中で交代させた。終盤に疲れを見せて守備での貢献が下がってしまうことが原因だが、いつも通りにやって上手くいかない現状で、いつも通りの優先順位で試合をすることは消極的な選択だ。

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