冨安健洋、遠藤航、鎌田大地…「欧州の入り口」を作った男(3)!山形伸之氏「日本サッカーの成長スピードを上げるために」の画像
遠藤航(VfBシュトゥットガルト)も18年シーズンはシント=トロイデンで活躍   代表撮影:JMPA
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 ポルトガル2部リーグに所属するクラブ「UDオリヴェイレンセ」をご存知だろうか? 同クラブの社長を務めるのが、日本人の山形伸之氏だ。先日も、チャンピオンズリーグでポルトガルの雄・FCポルトが、イタリアの名門ユベントスを下してベスト8入りを決めて話題になったように、ポルトガルはUEFAのランキングでは、5大リーグに次ぐ6位に位置している(7位オランダ、8位ロシア、9位ベルギーとつづく)。そんな強豪ひしめくリーグのクラブのすべてを取り仕切る山形氏が、今回、『サッカー批評Web』のインタビューにこたえてくれた(取材/文・ミムラユウスケ)

■山形伸之 やまがた・のぶゆき■ 1970年東京生まれ。2017年、DMMによるシント=トロイデンVVの買収と経営に参画。クラブ買収時には現地に飛び、元オーナーと直接交渉にあたる。2019年12月から日本企業、株式会社ナッツアンドアバウトが買収したポルトガル2部のUDオリヴェイレンセ社長に就任した。

 ポルトガル2部リーグ所属のUDオリヴェイレンセというクラブの社長を務めるのが、山形伸之氏。前編では、山形氏のバックボーンとポルトガルのクラブに興味を抱くまでの話を聞いた。後編は、このクラブの社長として、どのようにして日本サッカー界に貢献しようとしているのかについて語ってもらった。

■選手個々の「適応能力」に委ねない

――海外で活躍できる選手とそうではない選手の違いはどこにあると考えていますか?

「サッカーの能力以外に、コミュニケーション能力や語学力も影響していると思います。たとえば、遠藤航選手は英語がある程度はできる状態でヨーロッパにやって来ました。彼のようなケースは模範的ですが、そういう準備ができていないまま移籍をする選手は多い。これは日本人選手だけに限らないものですが、クラブが選手の成長のために、どれだけ向き合ってあげられるかがキーになると考えています」

――というと?

「ただ練習と食事を提供するというのではダメで。大学生くらいの年齢の選手であれば、試合に出られないで落ち込んだり、些細なことで悩んだり、言葉の問題でつまずいたり、様々な困難に直面します。そこは大学の部活の先生と同じような姿勢で、教育の一環のような形で選手たちに向き合っていく必要があると考えます。それをせずに、“この選手は適応能力がないからダメだ”と切り捨てるのではいけないと思うんですよね。マンチェスター・シティくらいのレベル、規模のクラブであれば、それでも良いのかもしれませんが」

――ヨーロッパのクラブでありながら、教育という視点を持っているというのは珍しいですね。

「親であれば、自分の子どもが何かをうまくできないときに、きちんと向き合いますよね。それと同じことです。僕は日本人ですけど、オリヴェイレンセのガーナ人選手でもブラジル人選手でも日本人選手と同じようにかわいいですし、子どもと接するように向き合っているつもりです」

オリヴェイレンセの練習を見守る山形氏(提供写真)
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