■“日本人らしい”欧州クラブの経営
――ヨーロッパの弱肉強食の経営スタイルは個人主義とも関係しているのかもしれませんね。
「日本人は、家族と接するように、選手と向き合う経営ができると僕は思うんですよ。オリヴェイレンセは小さなクラブですけど、そういう感覚をもったスタッフだけをそろえているつもりです。僕は日本とポルトガルを行き来していますが、日本にいるときでも寝るのは朝の6時で、起きるのは11時頃です」
――その理由は?
「日本にいるときもポルトガル時間で生活しているからです(時差8時間)。いつでも連絡取れるようにしないとスタッフも困りますし、選手が困ったことがあってもすぐに対応できるようにするためです」
――そこまで徹底しているのですね。
「これまでにヨーロッパに行った選手のなかでも、成功とはいえないケースも多くありました。ただ、“あの選手は適応できなかったんだな”の一言で片づけていたら、日本サッカーの成長スピードは上がらないと思うんです。
オリヴェイレンセに入ることを目標にする選手は、今はいないかもしれません。それでもよくて。“あのクラブがあったから、その後、ビッククラブに移籍できてよかった”と言ってもらえるような仕組みを作ることが僕の仕事としては大切ですし。そういうふうに使ってもらう場所だと思っています」
――クラブとしては何が何でも1部昇格を目指すという論理で動いているわけではないと?
「1部には昇格したいですよ。なぜかというと、1部にいる方がそこにいる選手の市場価値も上がりますし、来たいと思う選手も増えると思います。ただ、忘れてはいけないのは、所属する選手達を成功に導く事がクラブの成功でもあるという事なのです」