■ピッチに響いた旗手への怒号
3月21日に行われた浦和戦では、アンカーのジョアン・シミッチがボールを持った瞬間に前を指さしてボールを呼び込み、赤いユニフォームの裏に抜けてゴールを奪った。その動きや位置取りはサイドバックのものではなく、攻撃的なポジションの選手のもの。旗手の本来のプレースタイルが生かされた場面だった。
ピッチを自由に動き回る旗手だが、ルーキーイヤーの昨年はピッチの上で先輩選手に叱責される場面もあった。たとえば昨年8月のホームC大阪戦。家長昭博が右ウイングの位置でボールを持つと、川崎の選手はそれぞれクロスをゴールに結びつけるためのポジションを取る。家長の前を縦に走る、ゴール前で構える、相手選手をピン付けする、などだ。
川崎はクロスに対して受け手を複数用意するため、この場合、左ウイングにいた旗手がCFWの小林の背後に入らなければいけなかった。しかし旗手は入らなかった。そしてクロスはそのまま流れてしまった。すると、小林は旗手に対し、
「入って来いって!!」
と大きな声を挙げた。さらに続けて、
「入って来いよ!! 来いよー!!」
とジェスチャー交じりで動きを指示した。川崎の選手は、試合中であっても動き方を綿密に話し合う場面が多々見られる。旗手も、こうした中で戦術理解度を高めていった。