■個で戦う、という選択

 マンツーマンディフェンスに打ち勝つには、単純に言えば個で上回れば良い。しかし、個で上回るといっても、90分を通じて毎回勝ち続けることができるわけではない。5回に1回、あるいは10回に1回の失敗でも、その1回が失点に繋がってしまっては意味がない。だから、アタランタと戦う時は、質で勝っているはずのビッグクラブであっても様々な戦術的な工夫で上回ろうとしてきた。

 1stレグのレアルもそうだった。カリム・ベンゼマがいないこともあったが、イスコを最前線に配してマンツーマンのやり方を逆手にとる方法でチャンスを作り出していった。

 1stレグの1点がなければ、戦い方はまた違っていただろう。点を奪わなければならないアタランタが前から来てくれるからハマった戦い方だった。

 レアルの先制点がアタランタのミスによって生まれたものだったことや、アタランタのゴールの直後にレアルが突き放すゴールを奪ってみせたことも、両チームの力関係を象徴するものになってしまっていた。

 個で上回ることこそ正義、となっていたレアルに、これまで自分たちがやってきたことの限界を見せられてしまったアタランタはいつしか勇敢さを失ってしまった。

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