■キャプテンをベンチから出さなかった理由
同点に追いついた場面では、まさにこの配置が効いていた。ティラニーが1対1に仕掛けさせると、スミス・ロウが危険な香りを放ちながらボックス内へと走り込む。ゴール前ではアレクサンドル・ラカゼットとともに、絞り込んでいたサカが最終ラインを引きつける。そうしてぽっかり空いたスペースに侵入してきたのはウーデゴール。フリーでクロスを受けると、悠々とゴールネットを揺らした。
良いプレーを見せていたサナは、ハーフタイムに退いた。どうやら負傷であるようだが、ミケル・アルテタ監督はこのアクシデントもバネに変えた。効いたのは、投入したニコラ・ペペの左足だ。左サイドではドリブルからのクロスで怖さを発揮する左足が、強く振り抜かれたのは62分のことだ。高い位置でボールをカットすると、すかさず鋭く縦パスを通す。走り込んだラカゼットはPKを獲得し、自ら決めて試合をひっくり返した。
ラメラが2枚目のイエローカードを受けて10人となったトッテナムを相手に、試合運びのリズムが乱れた。その点はアルテタ監督も反省するが、ポストを叩いたケインのFKを必死でクリアするなど、集中力は高く保たれていた。
そこには、アルテタ監督の目に見えない采配が効いていた。キャプテンでありエースであるピエル=エメリク・オーバメヤンの扱いである。
今季のプレミアリーグで、メンバー入りしたオーバメヤンがピッチに立たなかったことは1度しかなかった。この試合でアルテタ監督は、その大黒柱をベンチに縛りつけたのだ。
その理由について、アルテタ監督は多くを語らなかったが、規律面での問題があったらしい。報道によると、これまでにもあったチームの集合時間への遅刻が、アルテタ監督の決断の理由であるようだ。