■スタイルを保つことを最優先に

 守備だけではなく、リバプールは攻撃でもそうだった。リバプールの攻撃は、カンテとジョルジーニョが中央にいることで中盤を省略したロングボールで裏を狙うか、右サイドのモハメド・サラーから中央に入り込んでくるサディオ・マネへとボールが動くことで成立していたが、戦術的なものではなく選手の質と判断による単発のものだった。

 その結果、42分にはメイソン・マウントに先制ゴールを奪われることになった。マウントのドリブル、そしてシュートは見事なものだったが、チアゴがヴェルナーを気にしてついて行ってしまったことでシュートを打つことが容易になった。戦術的な修正をせずに、選手の判断のみで保っていた均衡がついに崩れたが、破綻をきたすのは時間の問題だった。

 後半になると、チェルシーは試合をコントロールするためにボールを回すようになったが、ここでもクロップ監督は自分たちのスタイルを保つことを最優先に考えた。

 62分、ラストパスがことごとくブロックされてしまっていたカーティス・ジョーンズだけでなく、サラーも交代させる判断をした。守備への貢献が低かったことが理由だが、既にチェルシーのボール回しはリバプールのプレスを受けても問題なく続けられることが明らかになっており、サラーを代えてボールを奪いに行ったとしても、結果は変わらなさそうだった。攻撃で数少ない決定機を生み出していたサラーからマネというラインを諦めることの方が同点の可能性を低くしそうだった。 

 相手に応じてやり方を変えていくトゥヘル監督と、相手に関係なくやり方を変えないクロップ監督。結果を出したのは前者だった。

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