■学校はサッカー天国

 単純にボールをけること自体が楽しい。そして仲間と力を合わせてプレーすること、何より、勝利をつかみ、タイトルを獲得したときには、大きな喜びを覚える。だがそれだけでは、サッカーがこれほど愛されることの説明がつかないのである。世界中のサッカープレーヤーの心の奥底には、誰かに命じられたり叱責されたりすることなく、純粋にサッカーを楽しんだときの「幸福感」があるのではないか――。私はそう思っている。

 私の場合、それは高校時代の遊び時間のゲームだ。

 私の学校には、休み時間の遊び場としてアスファルト舗装の中庭があった。そしてもちろん、私たちの「遊び」は、1年中サッカーのゲームだった。サッカーのためにつくられた中庭ではない。「ゴール」は、ほぼ真四角の中庭の対角線上の隅にあったふたつのトイレ(入り口は校舎内にある)の壁だった。そこだけ少し飛び出し、色が違っていたからだ。ふたつのゴールは、正対してさえいなかった。90度の角度で向き合っていたのだ。

 それでよかった。大きな展開やスピーディーなプレーができるわけではない。いろいろなグループがいろいろな遊びをするなかを縫い、じゃましないように気をつけながら、かいくぐるようにパスを回し、ドリブルで進んでいくのだ。ボールは、人に当たっても危険がないよう、軟式テニス用のゴムボールだった。

 狭い中庭に、そんなグループが2つも3つもあった。学年ごとのグループだったのだろうか。まさに入り乱れてゲームに興じていたのだが、不思議にケガなどはなかった。チームをどう区別したのか。片方のチームがシャツを腕まくりしていたような気もするが、よく覚えていない。ともかくそんなことに苦慮した覚えがないほど、私たちは「中庭のゲーム」に熱中した。

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